10.27
ブータン、幸せの国で知られるブータン王国は日本によく似た国だった!?
今回のブログは、幸せの国として知られるブータン王国(通称ブータン)を紹介します。
まずは、龍の描かれた国旗からみていきましょう。
ブータンの国旗
ブータン王国、通称ブータンの国旗には、オレンジと黄色を背景に龍が描かれています。ブータンのチベット語による正式名称がའབྲུག་ཙན་དན་(ドゥク・ユル)、日本語に直すと大乗仏教ドゥク派の国、もしくは「雷龍の国」であることに由来します。また、背景の黄色は世俗の君主政治、オレンジは仏教を象徴しています。
龍のうろこの一つ一つまで細かく描かれ、世界的にも複雑な国旗の一つに数えられています。
図1. ブータンの国旗
ところで龍は神話・伝説上の生き物ですが、中国では神獣・霊獣とされ、「史記」の劉邦出生伝説をはじめ、皇帝のシンボルとして位置づけられてきました。
一方、インドの蛇神であり水神でもある「ナーガ」は、釈迦が悟りを開くときに守護したとされます。
このナーガが中国に伝わった際、龍や龍王などと訳され、仏教に取り入れられ仏法の守護神となりました。
ブータンの国名「ドゥク・ユル」は、大乗仏教(チベット仏教)ドゥク(雷龍)派の国を表わしています。
ブータンの国旗に描かれる龍は、ドゥク派の象徴であり、仏法の守護神であったのですね。
なお、龍が白く描かれているのは純粋さと忠誠心を表わし、龍がつかんでいる4つの玉(宝石)は富を象徴しています。
なぜドゥク派はドゥク(雷龍)派と呼ばれるのか
ちょっと話は横道にそれますが、チベット仏教の宗派ドゥク派の名前の由来について少しだけ解説したいと思います。
この宗派は一般にドゥク派、あるいはドゥクパ・カギュ派と表記されます。
開祖のツァンパ・ギャレー(ツアンパ・ギャレーパとも)は、1205年頃中央チベットのウー地方(ラサを含むチベット中部、ブータン北の国境線で接する)に通称ドゥク僧院(またはナムドゥク僧院)を創設しました。
伝承によると、この僧院の開山の際、大きな雷鳴が三度に渡って鳴り響いたと言い、このためドゥク僧院と通称されるようになったと言います。
また、すでにツァンパ・ギャレーは、ギャンツェにラルン僧院を建立しており、彼と弟子たちが後のドゥク僧院が建つこととなる地にたどり着いたとき、9匹の竜が天に昇るのを見たとも伝えられます。
図2. ウー地方とギャンツェ
そしてドゥク僧院から興った仏教流派をドゥクパ(パは人を意味する)と称し、17世紀になってこの宗派がブータンの国教となり、ブータンはドゥク・ユルと呼ばれるようになったのです。
ブータンの地理と文化
ブータン王国は北を中華人民共和国のチベット自治区、南をインドに囲まれた九州程度の大きさの内陸国です。
図3. ブータン王国とブータン王国の位置
ブータンの面積は3万8394km2、2024年7月1日における推計人口は79万1524人、人口密度は20.6人/km2、1年間の人口増減数は+5139人、人口増減率は0.653%でした。
国土はヒマラヤ山麓の南面に位置、その標高は南部で低く、北へ行くほど高くなり、1200m以上の高地はおよそ85%、3000m以上の高地は44.6%に達します。
このため、気候も南北で大きく異なり、南部のタライ平原では亜熱帯性気候、中部ではモンスーン気候、北部では高山・ツンドラ気候となっています。
中部のモンスーン気候地帯では、日本と気候がよく似ており、栽培植物や文化においても共通性が見られます。
同じ照葉樹林帯に位置し、一時期ブームとなった照葉樹林文化論では、類似した文化の広がる地域の東端と西端の国に位置づけられてもいます。
具体的には、漆器の使用や稲を育ててお米を食べる文化、蕎麦加工品を食べる習慣や酒の文化などの類似点があげられます。
ところで、漆器の使用と書きましたが、ブータンでは仏事に用いる漆器に塗られ、売り物ではないため外国人が目にすることはほとんどありません。これは、ブータンでは殺生が堅く禁止されており、ウルシの葉の茎から染み出す少量の漆を塗りつけることでしか漆の塗布が出来ないためです。
そしてなんと言ってもチベット系のブータン国民の顔立ちは日本人とよく似ているのです。
図4. 日本人と顔立ちのよく似たブータンの人々,ウィキペディア ブータンより
今回は、ブータンの国旗と地理、そして日本との類似点についてご紹介しました。
次の機会には、ブータンの歴史などについて紹介しようと思います。
<参照>
・ブータン基礎データ,外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/data.html#section1
・ブータン,世界の国旗,AsahiNet https://www.asahi-net.or.jp/~yq3t-hruc/flag_HU_Bhutan.html
・吉田健人・淺川滋男,ブータンの崖寺と瞑想洞穴,公立鳥取環境大学紀要第14号(2016.3)pp.51-70 https://www.kankyo-u.ac.jp/f/introduction/publication/bulletin/014/051-070.pdf
・ブータン王国,世界の国と地域を知る,東京都立図書館 https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/search/research_guide/olympic_paralympic/area_studies/index/bhutan/index.html
・吉村晶子,ブータンと伝統的な集落と民家,(公社)日本建築家協会関東甲信越支部 https://www.jia-kanto.org/online/kaigai/index.html
・国際連合 2024年、世界将来推計人口 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/
・Demographic Yearbook System http://unstats.un.org/unsd/demographic-social/products/dyb/index.cshtml
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』