2025
12.14

マルティニーク(その3)~マルティニークの人口参照方法とコミューンの分布

ブログ, 世界の人口センサス, 世界の国と地域

フランス海外県、マルティニークのブログの3回目です。

今回はマルティニークのコミューン(基礎自治体)の人口から、人口分布についてみていきたいと思います。

マルティニークの人口の参照方法

マルティニークはフランスの海外県のため、人口センサス結果はフランスの国立統計経済研究所(Insee)のホームページ(https://www.insee.fr/fr/accueil)から参照することができます。

Inseeのホームページでは、2022年の人口と1968年以降の人口など、諸データがまとめられたエクセルファイルをダウンロードすることができます。

具体的には、1968年、1975年、1982年、1990年、1999年、2006年、2011年、2016年、2022年のマヨットを除くフランス本土及びフランスの海外県のコミューンのデータが公開されています。

前回のブログでも解説した様に、フランスでは2004年以降ローリングセンサス方式による人口調査が行われる様になりました。

2006年は最初の5年間の中間の年であり、当時、法定人口として定められた人口に当たります。なお2022年以降はそれまで用いられていた「法定人口」という名称は基準人口(populations de référence)に改められました。

ここで取り扱う2022年の人口は、基準人口となります。

ファイルには、コミューンの人口に加え、出生数、死亡数、住居、主たる住居(世帯)、二次的住居及び臨時住居、空室数、世帯人口が記載されています。

人口の変遷やその他の諸要素の解説については、また別の機会に譲り、ここでは最新の2022年のコミューンの人口をみていきます。

マルティニークのコミューンの人口

Inseeのデータから2022年の人口をピックアップして下表にまとめました。

表.マルティニークのコミューンの人口

地名 和名 2022年
推計人口
(人)
L’Ajoupa-Bouillon アジュパ=ブイヨン 1,693
Les Anses-d’Arlet レ・ザンス=ダルレ 3,874
Basse-Pointe バッス=ポワント 2,810
Le Carbet ル・カルベ 3,619
Case-Pilote カーズ=ピロト 4,524
Le Diamant ル・ディアマン 5,924
Ducos デュコ 17,837
Fonds-Saint-Denis フォン=サン=ドニ 641
Fort-de-France フォール・ド・フランス 75,165
Le François ル・フランソワ 15,858
Grand’Rivière グランリヴィエール 508
Gros-Morne グロ=モルヌ 9,752
Le Lamentin ル・ラモンタン 39,346
Le Lorrain ル・ロラン 6,607
Macouba マクーバ 1,001
Le Marigot ル・マリゴ 2,991
Le Marin ル・マラン 8,526
Le Morne-Rouge ル・モルヌ・ルージュ 4,469
Le Prêcheur ル・プレシャール 1,463
Rivière-Pilote リヴィエール=ピロト 11,797
Rivière-Salée リヴィエール=サレ 11,818
Le Robert ル・ロベール 21,490
Saint-Esprit サン=テスプリ 10,422
Saint-Joseph サン=ジョゼフ 16,470
Saint-Pierre サン=ピエール 4,069
Sainte-Anne サン=タンヌ 4,491
Sainte-Luce サント=リュス 9,275
Sainte-Marie サント=マリー 14,827
Schœlcher ショルシェール 19,342
La Trinité ラ・トリニテ 11,622
Les Trois-Îlets レ・トロワ=イレ 6,735
Le Vauclin ル・ヴォクラン 8,481
Le Morne-Vert ル・モルヌ=ヴェール 1,748
Bellefontaine ベルフォンテーヌ 1,824

図1. マルティニークのコミューンの分布

マルティニークには34のコミューンがあり、西岸のフォール=ド=フランス湾の北の入り口に位置する都市、フォール・ド・フランス(7万5165人)が最大都市であり県都でもあります。

フォール・ド・フランスは旧名フォール=ロワイヤル、1902年にそれまでの県都サン・ピエールがプレー山の噴火により壊滅的打撃を受けたため県庁所在地となりました。経済成長が始まった1918年までは水道設備が悪く、周囲を湿地帯に囲まれていたこともあり、黄熱病の発生地として悪名高い街でした。

図2. フォール・ド・フランス(ウィキペディア フォール・ド・フランスより)

第2の都市、ル・ラモンタン(3万9346人)はフォール・ド・フランスに隣接する都市であり、マルティニーク・エメ・セゼール国際空港が立地します。なお、エメ・セゼールの名は、詩人で評論家、劇作家、政治家のエメ・フェルナン・ダヴィッド・セゼールからとられました。

フォール・ド・フランスの西隣にはマルティニーク第4の都市ショルシェール(1万9342人)が位置します。この街の名は、フランスの奴隷制度廃止論者で作家のヴィクトール・ショルシェールに因みます。

このように、フォール・ド・フランス周辺部からフォール=ド=フランス湾一帯には人口1万を超える様な街が集中し、フォール・ド・フランス都市圏を形成しています。

一方で、北西部には大きな街がなく、北東岸の街ル・ロラン(6607人)が最大です。
1902年の大噴火によりそれまでの県都サン=ピエールを壊滅させたプレー火山を中心に、街が点在しますが噴火の記憶もあってか、総じて人口は減少傾向です。

島で最古の都市でかつては「カリブのパリ」とも呼ばれ、20世紀初頭には3万人近くの人口を数えたサン=ピエールの街は、現在、人口4069人の豊かで静かな港街となっていますが、プレー山噴火当時の壊れた建造物跡が当時の噴火の恐ろしさを物語っています。

図3. サン・ピエールの街とプレー火山(ウィキペディア サン・ピエールより)

<参照>

・Population census,INSEE(フランス国立統計経済研究所) https://www.insee.fr/fr/accueil

・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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