03.01
定住化の進む遊牧民
~モンゴルの都会にゲルが立ち並ぶ!~
遊牧民の定義とは何でしょうか。
人類の生活類型は、定住型と移動型の二つに分類されると言います。このうち、移動型に属し、定住地を持たず移動しながら牧畜(すなわち遊牧)を生業とする民族が遊牧民とされています。
つまり、遊牧民には定住的な住所がない、ということになります。
そんな遊牧民にも、近代化とともに都市などへの定住化の波が押し寄せています。
特にモンゴルでは、1992年に社会主義を放棄し、モンゴル人民共和国からモンゴル国に改称して新憲法を制定しましたが、これが一つの転機となって、爆発的に都市への定住化が進んだようです。新憲法では、 人々が自由に居住地を選択できるようになったのです。
もともとモンゴルの遊牧民は、ゾドと呼ばれるほぼ10年に1度と言われる気象災害に悩まされてきました。ゾドの発生は、家畜の大量死を伴います。近年ではゾドが、より頻繁に発生するようになり、2000年代以降、ゾドにより2000万頭以上の動物が死亡したと言われています。
深刻化するゾドによる被害が、新憲法制定後の都市への定住化に拍車をかけたようです。
モンゴルの首都ウランバートルでは、1987年1月1日の推計で人口で515,100人でしたが、2018年7月5日の推計では1,477,174人、30年でおよそ3倍に増えました。
モンゴルの首都、ウランバートルをGoogleマップの空中写真で見ると市内にはゲルが立ち並んでいます。ゲルの立ち並ぶ地区は、ゲル地域と呼ばれています。ゲル地域の人口は、ウランバートルの人口の6割を占めると言われています。つまり、もともとは遊牧民であった人々が、ウランバートルに定住し、その数はウランバートルの人口の半数以上を占めるようになったということです。
なお、ゲル地域では、急激な人口の増加により、生活インフラの整備が立ち遅れ、生活環境が悪化しているようです。日本も協力して進められた都市開発により、アパート化がすすめられ、居住環境が徐々に改善されてきているようですが、一方で都市のゲルは減少していっているとも言えます。
今なお、ウランバートルの大半の地域でゲルが見られますが、今後こう言った風景も徐々に失われていくことになるのでしょう。
ウランバートル市内に見られるゲル
<参考>
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
・国際連合 人口統計年鑑システム https://unstats.un.org/unsd/demographic-social/products/dyb/
・家畜を大量死させる「ゾド」と、モンゴル遊牧民の厳しい生活,NATIONAL GEOGRAPHIC https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/18/050200118/
・新たに生まれゆくウランバートル:急拡大する都市で10年にわたり都市開発に取り組む,独立行政法人国際協力機構 https://www.jica.go.jp/topics/2019/20190910_01.html