2021
02.21

エディンバラ、もうひとつの世界遺産、スコットランドと日本の架け橋、フォース橋!そして、100年の時を経て今よみがえるウイスキー蒸留所とは!?

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スコットランドの首都、エディンバラは、スコットランド南部に位置し、北海に湾口を広げるフォース湾に面しています。

スコットランドで2番目の人口(2019年の推計、524,930人)を擁する町であり、その西側およそ100kmにはスコットランド最大の都市グラスゴーがあります。

スコットランドとエディンバラ

エディンバラ

エディンバラの市街地は、古生代の中ごろから末期にかけておこった二度の火山活動によって噴出した玄武岩溶岩の上に広がっています。

中でもエディンバラ城の建つキャッスルロックや、市街地の東側に位置しエディンバラ城から一望できるアーサー王の玉座(Ar)は、玄武岩質溶岩が氷河に削られてできたもので、その景色は壮観の一言に尽きます。

キャッスルロックの上に建つエディンバラ城

エディンバラ城から見たアーサー王の玉座(Arthur’s Seat)

エディンバラの二つの世界遺産

エディンバラの歴史的な建造物が立ち並ぶ旧市街と均整のとれた新市街が織りなす美しい町並みは、世界遺産に登録されています。

争いが絶えなかった地域のため、旧市街は中世ヨーロッパの要塞都市の景観を残し、その一方で新市街は18世紀以降の新古典主義の建物が立ち並んでいます。

歴史的建造物の立ち並ぶ旧市街

新市街の区画整理された町並みは非常に美しく、その後のヨーロッパの都市計画に影響を与えるほどでした。

この街並みは計画都市の最高傑作とも呼ばれています。

新古典主義の建物が立ち並ぶ新市街

そして、もうひとつの世界遺産、フォース鉄道橋は、エジンバラ市街地の北西端の集落サウスクイーンズフェリーとフォース湾の北側の街ダンファームリンの集落ノースクイーンズフェリーを結んでいます。

この鉄道橋は、全長2530mのカンチレバートラス橋で1890年に完成しました。

フォース鉄道橋

フォース橋が建設される前は、渡し船が湾を横断するために利用されていました。

1806年に2本のトンネル(1本が1方向)が提案され、1818年にはジェームズ・アンダーソン(James Anderason)が現在の橋に近い場所につり橋を提案します。

しかし、この橋の案は軽く華奢な印象を受け、鉄道を通すことが不可能と判断されたのか、実現はされませんでした。

その後、橋の設計は当時設計者として名を馳せていたトーマス・バウチ(Thomas Bouch)に任されることになります。バウチの案は、ジェームス・アンダーソンと同様につり橋案でした。

工事は1878年、フォース湾沖合のインチガービ島から始まります。

ところが、トーマス・バウチが設計し、建設から1年経過していたテイ湾にかかるテイ橋(つり橋)が強風により崩壊、運悪く通過していた列車がテイ湾に落ち75名の死者を出す大惨事となってしまいました。

この惨事は、設計にあたって風の影響を軽視していたこと、材料が粘りにかける鋳鉄だったこと、工事や管理がずさんだったことが原因と言われています。

トーマス・バウチはこの責任を問われ、フォース橋の建設は中止されます。

インチガービ島、島の構造物は建設が中止されたつり橋の基礎の遺構か

設計を引き継いだのは、ジョン・ファウラーとベンジャミン・ベイカーでした。

フォース橋はテイ橋の教訓から強風の影響を考慮して設計され、カンチレバートラス橋が採用されたのです。

ところで、このカンチレバー式ですが、この構造はインド、パキスタン、中国の奥地などで古くから利用された片持(突桁)梁が起源とされています。

フォース橋の建設には日本人の渡邊嘉一が監督技師として活躍しました。

カンチレバーの起源が東洋にあることから、渡邊嘉一の姿は、設計者であるジョン・ファウラー、ベンジャミンベイカーに挟まれて、王立科学研究所で橋の構造を理解してもらうために組み立てられたヒューマンモデル写真に残ることになったのです。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cantilever_bridge_human_model.jpg#/media/ファイル:Cantilever_bridge_human_model.jpg

エディンバラとスコッチウイスキー

ウイスキーと切っても切り離せないスコットランドですが、首都エディンバラからは、蒸留所をめぐる多くのツアーが組まれています。

では、エディンバラにウイスキー蒸留所はないのでしょうか。

実は、エディンバラでは1925年にグレンサイエンズ蒸留所が閉鎖されて以来、ウイスキー蒸留所が存在しませんでした。

しかし、この数年いくつかの蒸留所が、開業に向けてカウントダウンを始めているそうです。

そして、2019年7月に操業を開始した蒸留所がひとつだけあります。

その名は、ホリールード蒸留所。アーサー王の玉座にほど近い、今はお役御免となったエディンバラ=ダルケイス鉄道の施設の一部を利用して蒸留所は稼働しました。

エディンバラから蒸留所をツアーで巡るなら、その前にまずここを訪ねてみてはいかがでしょうか。

注:カンチレバートラス橋 トラス構造を持つカンチレバー橋。カンチレバーは日本語では片持ち梁と呼ばれる。片側が突出している支持体に梁やプレートの一端が固定される。代表的なものに水泳の飛び込み板があり、外的支えなしに構造を張り出すことを可能にする。また、部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式をトラス構造と呼び、外力に対して変形しにくい。

<参考>

・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・世界遺産オンラインガイド2021 https://worldheritagesite.xyz/

・高木千太郎,フォース橋,これでよいのか専門技術者,道路構造物ジャーナル https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/series/detail.php?id=124&page=2

・フォース橋 http://asait.world.coocan.jp/kuiper_belt/canal12/forth_bridge.htm

・三浦基弘,前田研一,フォース鉄道橋の隠された歴史 片持梁と渡邊嘉一,土木史研究 講演集 Vol.24 2004年 http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00902/2004/24-0215.pdf

・トラス構造とは?1分でわかるメリット、デメリット、計算法,建築学生が学ぶ構造力学 http://kentiku-kouzou.jp/struc-torasu.html

・エディンバラの新星、ホリールード蒸留所を訪ねて,WHISKY Magazine http://whiskymag.jp/holyrood/

・National Records of Scotland https://www.nrscotland.gov.uk/

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