03.15
世界地図から消えた?西アフリカの海岸と象牙海岸共和国
西アフリカのギニア湾に面する国、コートジボアールは公用語であるフランス語の海岸の名称がそのまま正式名称となった国です。日本語に訳すると象牙海岸、日本では以前、象牙海岸共和国とも呼ばれていました。
15世紀ごろポルトガル人がこの海岸に来航し、象牙の交易をおこなったため、象牙海岸という名がついたそうです。
植民地時代、フランス語表記の「Côte d’Ivoire」が各国で意訳され、日本語の「象牙海岸」のほか、例えば英語では「Ivory Coast」が名称として使われていました。コートジボアールが独立した1960年以後も各国で意訳の国名が利用されていたため、日本でも当時は象牙海岸共和国とも呼ばれていたようです。
1985年になって、 フランコフォニー国際機関が、 「Côte d’Ivoire」 を意訳しないよう求める決議を行い、翌1986年にコートジボアール政府が意訳による外名の使用廃止とフランス語国名の採用を各国に要請しました。
国際連合の世界人口年鑑(DEMOGRAPHIC YEARBOOK)でも、コートジボアールを1984年までは 「Ivory Coast」、1985年以降は 「Côte d’Ivoire」 と表記しており、この意を受けたものと思われます。
さて、ギニア湾に面する海岸には、象牙海岸のほかに奴隷海岸、黄金海岸、穀物海岸があり、交易の対象物がそれぞれの名称の由来になっています。海岸の範囲は次の表のとおりです。
西アフリカの海岸名とその範囲
名称 | 海岸のおおよその範囲 |
穀物海岸(胡椒海岸) | リベリア、シエラレオネ |
象牙海岸 | コートジボアール |
黄金海岸 | ガーナ |
奴隷海岸 | トーゴ、ベナン、ナイジェリア西部 |
現在発行されている世界地図からは、過去の悲惨な状況を思いださせる地名であることから、これらの海岸の名称は消えているようです。
国名に過去を閉じ込めた国、コートジボアール。この国の名前のみが、今でも西アフリカの地図上で、過去を伝えています。
西アフリカの海岸とコートジボアール
<脚注>
フランコフォニー国際機関:世界中の様々な文化圏に属する、民主主義や人権といった普遍的な価値観とフランス語とを共有する国・地域の総体であるフランコフォニーの名を冠した国際機関。
外名:第三者による特定の土地・民族の呼称のこと。対義語は内名。例えば、「Japan」は外名、「日本」は内名。
<参考>
・世界地名ルーツ辞典,牧英夫編著,創拓社,1989
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
・国際連合 人口統計年鑑システム https://unstats.un.org/unsd/demographic-social/products/dyb/
・世界史の窓 https://www.y-history.net/appendix/wh1002-079.html