2021
04.05

宇部市、エヴァンゲリオンでも魅せたその工業都市の雄姿は、品位の低い石炭から?炭鉱の街から工業の街へ、その変貌を追う!

ブログ

宇部市は山口県西部、県庁所在地の山口市と、県内で最も人口の多い自治体である下関市のちょうど中間に位置する、瀬戸内海に面する人口169,429人、面積286.65km2、人口密度591.1人/km2、世帯数73,225世帯(以上、平成27年国勢調査)の自治体です。

宇部市

市内の宇部新川駅が、映画シン・エヴァンゲリオン劇場版(最後の記号は略、演奏記号のリピート記号)のラストシーンで使われたことで話題になりました。

宇部市は、映画の監督である庵野秀明氏の出身地でもあり、映画の公開後はファンが殺到しているといいます。

劇中にも描かれたコンビナート群に代表されるように、宇部市は工業の街です。

宇部市のコンビナート群と宇部興産専用道路の興産大橋

そんな宇部市ですが、昭和の半ばまでは炭鉱の街でした。

なぜ宇部市は炭鉱の町から工業の街に変貌を遂げたのか、まずは炭鉱の歴史を紐解いてみましょう。

宇部炭鉱の歴史

文献上はじめて宇部の石炭の記述がみられるのは、1645年(寛永21年)、江戸時代の俳諧論書「毛吹草」においてです。

この書の中で山口舟木炭の名が記載されています。

舟木は、2004年に宇部市に合併した楠木町の一地区で、現在も宇部市舟木としてその名が残っています。

宇部市舟木

1868年(明治元年)になって、当地を支配する山口藩は舟木に石炭局を開設、明治維新後炭鉱の管理は民間の手に移って、東見初(ひがしみぞめ)炭鉱、沖ノ山(おきのやま)炭鉱、長生(ちょうせい)炭鉱などに資本が参入し、開発が進められ、石炭の採掘は本格化していきます。

宇部炭田は宇部市海岸から沖合に伸びる海底炭田です。

採掘の本格化後、たびたび炭田の海底部で落盤、海水流入による死亡事故が発生しました。

主な事故には、1916年(大正5年)の東見初炭鉱の海水流入事故(235名死亡)、1942年(昭和17年)の長生炭鉱における海水流入事故(183名死亡)などがあります。

さて、宇部炭は品位があまり高くなったこともあり、沖ノ山炭鉱を中心に匿名組合沖ノ山炭鉱組合を設立した渡辺祐策(すけさく)らは採掘した石炭をセメント製造の燃料や硫酸アンモニウム等の化学肥料の原料として利用しました。

渡辺祐策は沖ノ山炭鉱の他、宇部新川鉄工所(後の宇部鉄工所)、宇部セメント製造、宇部窒素工業などを次々と興しましたが、祐策の没後の1942年(昭和17年)にこれらの企業は合併し、宇部興産となりました。

宇部の炭鉱群はエネルギー革命のあおりを受け、石炭局開設から100年の節目となる1967年(昭和42年)までにはすべて閉山されてしまいますが、その後も宇部市は宇部興産を中心とし、瀬戸内海工業地域の一角として残ることができたのです。

つまり、品位の高くなかった宇部炭と宇部市に生を受けた渡辺祐策が、現在の宇部市の工業の発展に寄与しているといって良いでしょう。

さて、次回も宇部市について、連続掲載予定です。

別の側面から宇部市の歴史や地勢を見ていきたいと思います。

<参考>

・宇部の炭鉱遺産,ときわ公園 https://www.tokiwapark.jp/sekitan/heritage/

・シン・エヴァの「聖地巡礼」 庵野さん地元にファン殺到,朝日新聞DIGITAL https://www.asahi.com/articles/ASP3Q53PTP3QTZNB00B.html

・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・政府の総合統計窓口 https://www.e-stat.go.jp/

コメントは利用できません