2021
10.04

悪魔に魂を売り渡した?作曲家、ヴァイオリニスト、パガニーニを生んだ街、ジェノヴァ!愛用のヴァイオリン「イル・カノーネ」が、天才ヴァイオリニストたちをこの地に誘う!

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ジェノヴァは、イタリア北西部、地中海北部のリグリア海に臨み、北イタリアのミラノやトリノなどの産業都市を背景として地中海有数のコンテナ取扱高を誇るイタリア最大の貿易港を持つ港湾都市です。

人口センサスによるコムーネ注1の人口は58万6180人(2011年10月9日)、2021年1月1日の推計では、55万8930人でした。

そう、ジェノヴァは近年人口減少が続いています。

1981年10月25日のセンサスによる人口は76万2895人でした。2021年の人口は1981年当時のおよそ73%にまで減少したのです。

中世には海洋国家、ジェノヴァ共和国として栄え、イタリアの金融業の中心地として長い歴史を持つ都市ですが、その歴史を紹介する前に、ジェノヴァが生んだあの作曲家、ヴァイオリニストを紹介しましょう。

パガニーニとジェノヴァ

ニコロ・パガニーニを知っていますか。

ジェノヴァ生まれの作曲家、ヴァイオリン奏者で、超絶技巧テクニックや容貌から、その演奏技術は悪魔に魂を売り渡してその代償として手に入れたものだと噂されました。

Niccolo Paganini01

イタリアの画家アンドレア・セファリー(1827-1907)によるニコロ・パガニーニの肖像画(ウィキペディア、ニコロ・パガニーニより)

パガニーニのコンサートでは、失神する女性もいたとか。

最近では2014年にはパガニーニの生涯を題材とした映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」が日本でも公開されました。

さて、売れない貿易商アントニオ・パガニーニとその妻テレサの間に6人兄弟の3番目として生まれたパガニーニは、5歳の時に父からマンドリンを習い始め、7歳でヴァイオリンに転向します。

パガニーニの音楽的な才能はすぐに認められ、ヴァイオリンのレッスンのために多くの奨学金を得ることができましたが、地元のヴァイオリニストに師事したものの、彼の成長はすぐに師匠の能力を上回ってしまいます。

パガニーニは父とともに北イタリア中央部の都市パルマに向かいます。

北イタリア中央部に位置するパルマ

パガニーニの音楽活動ははじめイタリア国内に限られていました。

1827年、ローマ教皇レオ12世より勲章を授与され、彼の名声はヨーロッパ中に広まり、その後ヨーロッパ各地を公演のため転々とすることになるのです。

1834年9月、パガニーニはコンサート活動に終止符を打ち、ジェノバに戻りました。ジェノバでパガニーニは、自分の曲や奏法を秘密にするという俗説とは裏腹に、その出版に力を注いだのです。

パガニーニは1840年5月にフランスのニースで亡くなりますが、悪魔と取引したとの噂があったことから、生誕地のジェノヴァの教会は埋葬を拒み、ゆかりの地であるパルマの墓地に埋葬されたのは、亡くなって36年の歳月がたった1876年のことでした。

ジェノヴァにあった生家もすでに取り壊されてしまいましたが、それでも楽器コレクターであったパガニーニの所有していたヴァイオリンやギター、手紙などの資料がこの地に残されています。

ジェノヴァの音楽院には演奏旅行の際の出納帳が保存され、研究に利用されています。

また、市内のトゥルシ宮(Palazzo Doria Tursi)には、パガニーニの愛用していたヴァイオリン「イル・カノーネ」注2などが、その一番奥まった部屋、その名も「パガニーニの部屋(Sala Paganiniana)」に展示されています。

「パガニーニの部屋」のあるトゥルシ宮(Palazzo Doria Tursi)

現在、ジェノヴァではパガニーニ国際ヴァイオリンコンクールが隔年で開催されています。コンクールの優勝者には、副賞として「イル・カノーネ」を演奏する機会が与えられているといいます。

第56回のコンクールは、2018年以来3年ぶりに、今年の10月15日から24日にかけて開催されます。

今年は誰が、パガニーニの愛用した「イル・カノーネ」を奏でる権利を得ることができるのでしょうか?

注1 コムーネ:イタリア語で共同体。イタリアの自治体の最小単位の組織(基礎自治体)である。

注2 イル・カノーネ:バルトロメオ・ジュゼッペ・ガルネリ・デル・ジェスによって製作され、パガニーニに贈られたヴァイオリン。

<参考>
・https://www.bunkyo-gakki.com/stories/music/europestringwatch/paganini 安田真子,第4回 パガニーニをジェノヴァに訪ねて,ヨーロッパ弦楽ウォッチ,BUNKYO GAKKI
http://www.premiopaganini.it/

・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・https://www.istat.it/it/ イタリア国立統計局

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