10.25
人口集中地区(DID)の人口と面積の推移から見る戦後日本の都市化~令和7年国勢調査結果を踏まえて
総務省統計局が国勢調査で設定している「人口集中地区(DID)」は、日本の都市化の状況を把握するうえで非常に有用な指標です
人口集中地区とは、人口密度が1平方キロメートル当り4000人以上の基本単位区が隣接し、全体で5000人以上の人口を有する地域を指します。1960年(昭和35年)国勢調査から導入され、現在までほぼ同じ基準で設定されています。
日本の人口は2008年頃をピークに減少局面に入りましたが、人口集中地区に居住する人口の割合は現在も増加を続けています。今回のブログでは、1960年以降の人口集中地区の人口、面積、人口密度の推移から、日本の都市化の歴史を振り返ってみたいと思います
DID人口は一貫して増加した
表1は日本全国の人口、人口集中地区の人口、人口集中地区の人口の総人口に占める割合を表にまとめたもの、図1は人口集中地区の人口とその総人口に占める割合の経過図です。
表1.日本全国の総人口、人口集中地区の人口、および人口集中地区の人口の総人口に占める割合
| 年 | 全国の人口 (人) |
人口集中地区の人口 (人) |
人口集中地区の人口の総人口に占める割合 (%) |
| 1960(昭和35)年 | 94,301,623 | 40,829,991 | 43.30 |
| 1965(昭和40)年 | 99,209,137 | 47,261,455 | 47.64 |
| 1970(昭和45)年 | 104,665,171 | 55,996,885 | 53.50 |
| 1975(昭和50)年 | 111,939,643 | 63,822,648 | 57.02 |
| 1980(昭和55)年 | 117,060,396 | 69,934,854 | 59.74 |
| 1985(昭和60)年 | 121,048,923 | 73,344,121 | 60.59 |
| 1990(平成2)年 | 123,611,167 | 78,152,452 | 63.22 |
| 1995(平成7)年 | 125,570,246 | 81,254,670 | 64.71 |
| 2000(平成12)年 | 126,925,843 | 82,809,682 | 65.24 |
| 2005(平成17)年 | 127,767,994 | 84,331,415 | 66.00 |
| 2010(平成22)年 | 128,057,352 | 86,121,462 | 67.25 |
| 2015(平成27)年 | 127,094,745 | 86,868,176 | 68.35 |
| 2020(令和2)年 | 126,146,099 | 88,285,927 | 69.99 |
| 2025(令和7)年 | 122,972,528 | 87,714,264 | 71.33 |

図1. 人口集中地区の人口とその総人口に占める割合の経過
1960年の人口集中地区人口は4083万人でした。
これは全国人口の43.3%に当り、当時はまだ過半数の人々が人口集中地区の外側に居住していたことになります
その後、高度経済成長による工業化や都市部への人口流入が進み、人口集中地区人口は増加を続けました。
1960年には4割程度だった人口集中地区人口比率は2020年には約7割に達しています。
つまり日本はこの60年間で、都市居住が一般的な社会へと変化したことがわかります。
最新の2025年の人口集中地区人口では、人口集中地区の統計開始以来初めてその人口が減少したのですが、人口比率はこれまで同様に増加を続ける結果となりました。
市街地面積はさらに大きく拡大した
人口以上に大きな変化が見られるのが人口集中地区の面積です。
表2は日本の総面積、人口集中地区の面積、人口集中地区の面積の総面積に占める割合を表にまとめたもの、図2は人口集中地区の面積とその総面積に占める割合の経過図です。
表2. 日本全国の総面積、人口集中地区の面積、および人口集中地区の面積の総面積に占める割合
| 年 | 全国の面積 (km2) |
人口集中地区の面積 (km2) |
人口集中地区の面積の総面積に占める割合 (%) |
| 1960(昭和35)年 | 377,151.09 | 3,865.2 | 1.02 |
| 1965(昭和40)年 | 377,267.18 | 4,604.9 | 1.22 |
| 1970(昭和45)年 | 377,308.69 | 6,444.1 | 1.71 |
| 1975(昭和50)年 | 377,534.99 | 8,275.4 | 2.19 |
| 1980(昭和55)年 | 377,708.09 | 10,014.7 | 2.65 |
| 1985(昭和60)年 | 377,801.14 | 10,570.7 | 2.80 |
| 1990(平成2)年 | 377,737.11 | 11,732.2 | 3.11 |
| 1995(平成7)年 | 377,829.41 | 12,260.5 | 3.24 |
| 2000(平成12)年 | 377,873.06 | 12,457.4 | 3.30 |
| 2005(平成17)年 | 377,914.78 | 12,560.6 | 3.32 |
| 2010(平成22)年 | 377,950.10 | 12,744.4 | 3.37 |
| 2015(平成27)年 | 377,970.75 | 12,786.3 | 3.38 |
| 2020(令和2)年 | 377,976.41 | 13,250.4 | 3.51 |
| 2025(令和7)年 | 377,979.67 | 13,297.7 | 3.52 |
注:日本全国の総面積は、国勢調査令の規定に基づき,調査の対象から歯舞群島,国後島,択捉島(属島を含む)、 竹島の面積を除いたものである

図2. 人口集中地区の面積とその総面積に占める割合の経過
人口集中地区面積は、1960年から2020年までの60年間で約3.4倍に拡大しました。
特に1965年から1980年までの15年間の変化は顕著です。
この期間に、
・DID人口は4726万人から6993万人へ約48%増加
・DID人口面積は4605km2から1万0015km2へ約117%増加
しました。
人口も増えましたが、それ以上の速さで市街地面積が拡大したことがわかります。
言い換えれば、この時期は「人口が都市へ集中した時代」であると同時に、「都市そのものが外側へ広がった時代」でもあったのです。
人口密度は逆に低下している
人口と面積を組み合わせてみると、さらに興味深い結果が見えてきます。
表3は人口集中地区の人口密度を表にまとめたもの、図3は人口集中地区の人口密度の経過図です。
表3. 人口集中地区の人口密度
| 年 | 人口集中地区の人口密度 (km2) |
| 1960(昭和35)年 | 10,563.49 |
| 1965(昭和40)年 | 10,263.30 |
| 1970(昭和45)年 | 8,689.64 |
| 1975(昭和50)年 | 7,712.33 |
| 1980(昭和55)年 | 6,983.22 |
| 1985(昭和60)年 | 6,938.44 |
| 1990(平成2)年 | 6,661.36 |
| 1995(平成7)年 | 6,627.35 |
| 2000(平成12)年 | 6,647.43 |
| 2005(平成17)年 | 6,713.97 |
| 2010(平成22)年 | 6,757.59 |
| 2015(平成27)年 | 6,793.84 |
| 2020(令和2)年 | 6,662.89 |
| 2025(令和7)年 | 6,596.19 |

図3. 人口集中地区の人口密度の経過
人口集中地区人口は増えているにもかかわらず、人口密度は1965年から1980年にかけて約3割も低下しました。
一見すると矛盾しているようにも見えます。
しかし、これは人口集中地区の定義変更によるものではありません。
統計局によれば、先にも示した人口密度4000人/km2以上、人口5000人以上という人口集中地区の基本基準は、1960年の導入以来維持されています
つまり、この人口密度低下は実際の都市構造の変化を反映したものなのです。
高度経済成長がもたらした郊外化
1960年代後半から1970年代にかけて、日本では大規模な郊外開発が進みました。
東京、大阪、名古屋などの大都市圏では人口流入が続き、既成市街地だけでは住宅需要を受け止められなくなりました。
そこで、
・公団住宅
・団地
・ニュータウン
・郊外住宅地
の建設が盛んになります。
代表例として、
・千里ニュータウン(大阪府豊中市と吹田市にまたがる千里丘陵に作られた日本最初の大規模ニュータウン)
・多摩ニュータウン(東京都の多摩丘陵(八王子市・町田市・多摩市・稲城市)にまたがる日本最大規模のニュータウン)
・高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市東部の丘陵地帯に建設されたニュータウン)
などが知られています。

図4. 千里ニュータウン

図5. 高蔵寺ニュータウン
また、モータリゼーションの進展によって人々の居住地選択の範囲も広がりました。
戦前の都市は駅周辺や旧市街地に人口が集中する傾向が強くありましたが、戦後には鉄道沿線や幹線道路沿いへ住宅地が広がり、市街地の外延的拡大が進行しました。
その結果、人口密度4000人/km2以上という基準を満たす郊外住宅地が次々と人口集中地区へ編入されるようになったのです。
DID統計から見える都市化の二つの段階
人口集中地区統計の変化を眺めると、日本の都市化には大きく二つの段階があったように思われます。
第一段階は、戦後復興期から高度経済成長初期にかけての「人口集中の時代」です。
農村から都市への人口移動によって都市人口が急増し、既存市街地の密度が高まりました。
第二段階は、1960年代後半から1980年代頃にかけての「都市拡大の時代」です。
人口は依然として増加していましたが、それ以上のペースで住宅地開発が進み、市街地面積が急速に拡大しました。
人口密度の低下は都市の衰退ではなく、むしろ都市圏の拡大と郊外化を表していたと言えるでしょう。
おわりに
人口集中地区統計は、単なる人口統計ではありません。
人口集中地区人口の割合は、日本社会がどの程度都市化したかを示し、面積の変化は都市の広がり方を示しています。
特に1965年から1980年にかけての人口密度低下は、高度経済成長期の郊外化やニュータウン開発と深く結び付いています。
人口集中地区統計を通して見ると、日本の都市化とは単純な人口増加ではなく、「人々が都市に集まり、その後都市そのものが拡大していく過程」であったことがよく理解できます。
現在は人口減少時代に入っていますが、今後は人口集中地区の縮小や再編が見られる可能性もあります。
実際に2025(令和7)年の国勢調査結果では、人口集中地区の総人口が減少しました。
今回の国勢調査、そして今後の国勢調査の結果を分析していく際には、都市化だけでなく「都市の縮小」がどのように現れるのかにも注目していきたいと思います。
<参考>
・総務省統計局「人口集中地区とは」 https://www.stat.go.jp/data/chiri/1-1.html
・総務省統計局「人口集中地区に関するQ&A(回答)」 https://www.stat.go.jp/data/chiri/qa/qa-1.html
・総務省統計局『国勢調査』各回報告書(1960年~2025年)
・政府統計の総合窓口(e-Stat)「国勢調査 最終報告書『日本の人口・世帯』」
・国土交通省国土数値情報「人口集中地区データ」 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
総理府統計局『統計局研究彙報 第12号』(1963年)


